地域包括ケアシステムの推進と、人材の育成を

とやま総合診療 イノベーションセンター
センター長 総合診療部教授
山城 清二 Seiji Yamashiro

この度、富山大学は文部科学省の未来医療研究人材養成拠点形成事業(リサーチマインドを持った総合診療医の養成:平成25年度)で「地域包括ケアのためのアカデミックGP養成」事業が採択されました。この事業は次のような背景から誕生しました。

【1】 富山大学総合診療部は平成16年3月に設置されてから10年目を迎え、徐々に若い医師が集まり、診療体制も整い、最近では家庭医療や総合内科の専門医の資格を取得できる体制が整ってきました。そして、さらなるキャリアアップのために、アドバンスコース(フェローシップコース)を準備しなければならない時期を迎えていました。

【2】 この間、平成20年から富山県で最も深刻な地域医療崩壊が起こった南砺市の地域医療の支援にも関わってきました。初めは総合診療医の派遣、そして診療所での人材育成、次に住民参加型システムを採用して地域医療再生に取り組んできました。この取り組みは5年目を迎えやっと医療崩壊からの再生の兆しが見えてきました。この「南砺市モデル」は県内外から注目され、最近では他の地域へ応用してほしいという要請が起こってきました。

【3】 そして、昨今地域で求められている地域包括ケアの構築では、高齢者医療や医療システムの複雑な状況の中で地域のニーズの把握とともに多職種での連携が重要になってきています。カナダのトロント大学では、数年前から患者や医療システムの複雑性に対してCenter for Innovation of Complex Care (CICC)というイノベーションセンターを立ち上げて、総合診療領域での課題解決に取り組んできています。今回、そのCICCと連携しながら学術交流が可能になりました。

このような背景の中で、文部科学省に本事業が採択されたことは正に時宣を得たものであると思われます。今後、本事業では上記の3つの背景から次のような取り組みを実施していく予定です。

【1】人材育成:学生から初期研修医、後期研修医、そして総合診療医のキャリアパスの提示

【2】地域包括ケアへの取り組み:住民参加型システムとして南砺市モデルから富山市へ、そして富山県全体への展開

【3】研究の拠点:地域包括ケアシステムの推進と総合診療医の人材育成の核となる、とやま総合診療イノベーションセンターの設置と運営

その他、既存のシミュレーターや新規のシミュレーターを整理したシミュレーションセンターの設置、大学と地域病院で連携したテレビカンファレンスの実施など

本事業で、地域医療の課題にチャレンジするアガデミックGPを養成し、富山県内の地域医療に少しでも貢献できるように取り組んでいくつもりです。今後とも皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

慈しみの心を持って、地域医療に従事する

とやま総合診療 イノベーションセンター
副センター長
村口 篤 Atsushi Muraguchi

昭和50年に富山県民の期待を込めて設立された富山大学医学部(旧富山医科薬科大学医学部)は、「仁に里(お)るを、美となす」を設立理念とし、慈しみの心を持って地域医療に従事する使命感を持った医師や創造性豊かな研究者等の養成を積極的に推進してまいりました。 
急速に進展する高齢化や医師不足による地域医療の崩壊等、我が国の医療を取り巻く環境は、年ごとに厳しさが増しています。

富山県の医療に関しては、地域性の課題として、超高齢化、医師数の地域格差、地域医療の崩壊、診療科の偏在(特に産婦人科、小児科、救急科)があります。また、包括性の課題として、医療・保健・福祉・介護の連携不足と生活支援体制の不備があります。

このような状況下で、富山大学附属病院総合診療部は、5年前に、最も早く医療崩壊が進んで廃院となった南砺市の福野厚生病院を「南砺家庭地域医療センター」と改名し、地域で総合診療医を育てる人材育成の場として診療を再開しました。更に、南砺市と協力して、地域の住民・行政・医療職と大学が協働して地域医療の再生に取り組み、南砺市民病院の医師数を増加させ、訪問看護・リハビリの活性化と看護師数を増加させています。さらに、地域包括支援センターと住民グループが認知症対策を積極的に開始するなど、顔の見える住民参加型システム(南砺市モデル)を構築しました。 

この「南砺市モデル」を「富山市モデル・富山県モデル」へ、さらに我が国の「未来型地域包括ケアシステム」へと展開することを目的として、富山大学医学部は、平成25年の「文科省医療研究人材養成拠点事業」に応募し、「リサーチマインドを持った総合診療医の養成」拠点に指定されました。因みに、全国で15拠点が採択されました。その骨子は、富山大学に「とやま総合診療イノベーションセンター」を立ち上げ、地域包括ケアシステムの養成ゾーン(教育・研究・政策)と実践ゾーン(医療・保健・福祉・介護・生活支援と地域住民の多種職連携)を一本化するためのリサーチマインドを持った優れた臨床能力を有する総合診療医、ならびに教育・研究・政策が担当できる総合診療医を養成する「地域包括ケアのためのアカデミックGP(General Physician)を養成することです。

 この取り組みは、富山大学医学部のミッションの再定義(平成25年12月文科省公表)の一つである「地方公共団体と連携した医療人養成や住民参加による地位医療再生の取組などの実績を活かし、地域の課題に即した人材育成や社会貢献を積極的に推進する」に沿った大学事業であり、富山大学医学部と附属病院の強力な支援のもとに遂行致します。皆様のご理解とご協力をよろしくお願い致します。